B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

HONZ主宰の成毛眞さんがFacebookにこう紹介されていた。
なんでまた日本植物燃料株式会社社長という肩書の人が、アフリカで電子マネー始めたのだ!という不思議。電気もないモザンビークの村で日本人がなーにしとるのだ!という謎。推薦するしかない。
もう、この推薦文に尽きるんだけど、めちゃめちゃ面白い。

バイオ燃料事業を経営する著者が、アフリカのモザンピークで電子マネー経済圏をつくる現在進行中のプロジェクト。先日、某イベントでご一緒したけど、お若い。

まず経歴が面白い。

純粋哲学を学びたくて京都大学に進むも、法学部の授業に関心が持てず、探検部に所属して山登りに打ち込む。ペルー・アンデスで呑んだくれている時に出会ったお菓子売りの少女がきっかけで、世界の貧富格差の構造に気づく。が、中退後なぜか先物取引の営業になり、その後5000万円の借金を背負うも完済し、バイオ燃料の会社を立ち上げる。

著者は、もともと電子マネー経済圏をつくろうとしたわけではなく、本業のバイオ燃料事業のために原料となるヤトロファという植物の生産拠点をモザンピークで立ち上げている。電気も通らない貧村で、商店をつくり、売上管理に頭を悩ませる中で、電子マネーの普及に取り組むようになる。

冒頭で著者は、「世界は『現実』と『ものがたり』でできている」という。

そして、お金の歴史の中で、最も重要な歴史上のふたつの出来事があったとする。ひとつめは1099年の十字軍によるエルサレム奪還で、ふたつめはイングランド銀行の誕生だという。

十字軍がエルサレムを奪還することで、キリスト教徒による聖地巡礼が復活する。しかし長旅の中、盗賊などに襲われて携行した財産を失ってしまう可能性がある。それを解決するために、出発前に近所のテンプル騎士団に財産を預け、証書を受け取り、巡礼先で同額の財産を引き出すことができる仕組みが生まれた。

これこそ為替技術の原型で、金融の基礎になった。そして「金融とは、帝国の運営技術の一つ」だとする。

本を読んで思ったことは、逆に、帝国の形が変われば、金融というものの形は変わらざるをえないのだろうということだ。

大量生産大量消費、長い運輸を前提とした帝国や産業の形が、インターネットの進化によって分散化を迎えれば、金融の形もまた変わっていく。

この壮大な金融の歴史観を語りながら、地に足のついた(というより、気が遠くなるほど騒乱に満ちた)現実と対峙して、メディチ家やロスチャイルドがつくりあげてきた銀行とは別の「ものがたり」をアフリカの地でつくろうとしている。

石油の時代、鉄道や自動車といったインフラに牽引されて、欧米を中心に、巨大な金融と産業が生まれた20世紀。太陽光発電やファブリケーションが、新たな経済圏や産業の形を生み出す中で、この人がどのような21世紀の金融をつくりだすのか、目が離せない。




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