B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

HONZ主宰の成毛眞さんが絶賛し、コルク佐渡島庸平さんがTwitterで賞賛しておられた時点で、買うしかないのであり、書評というか感想を書くなど屋上屋を重ねるようなものだけれど、やはりとっても面白かった。

びっくりするのは、これが小説ではなく、ノンフィクションだということだ。稀代の贋作作家・ギィ・リブは、2005年に逮捕され、出所した現在は、セーヌ川沿いで絵を描いて暮らしているという。

ロアンヌの娼館で生まれ、絵画と出会った幼少期、家出して路上生活者になり、絹織物の図案師で身を立て、水彩画が売れるようになった青年時代。贋作を始める20代。

めくるめく酒とバラの日々。アーティストを取り巻く、山師のような実業家たち、フランスを代表する女優や画家たちとの交流。淡々と描かれるエピソードの、ピカレスクのような面白さ。

そして彼の「クリエイター」としての生活。コーヒーを飲み、美しいものに囲まれ、作家を調べ尽くし、集中力を高めながら、その世界に没入していくプロセス。
シャガールは妻が毎朝持ってくる花束の色から着想を得ていた。だから俺はまったく同じことをして、サン=マンデの花屋と契約し、毎朝、その日の花を届けてもらっていた。
ピカソの贋作を作っているとき、俺は彼と一緒にいるような気持ちだった。絵を描くにつれ、どこまでこの関係でいられるのかを知りたくなった。俺は彼が感じたであろうことを感じ、彼が体験したであろうことを体験しようとした。
「真作」と「贋作」の違いはなにか。著者はたびたび自問している。

ピカソは、何回も修復された自分の絵を「これは自分の作品ではない」といったという。一方で、シャガールをはじめとする作家本人の娘にさえ「これは本物です。私は、父がこれを描いているところを見ました」と言わしめた著者。
ピカソの簡単な三角形一つが、難しすぎて手に負えないこともあった。ピカソ自身は二十秒で描いたものだが、その二十秒には実際、彼の才能に加えて、何年もの仕事と体験が含まれていた。それと同じようにいいものを作るには、その動き、方向、手の速さまで理解しなければならなかった。
世界の絵画マーケットには現在も、ギィの手になる贋作が「本物」の鑑定書をつけて、何枚も流通しているという。

ギィ・リブ
キノブックス
2016-08-17

 
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