B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

キングダムの最新刊を待ちながら、面白いマンガはないかと物色。

マンガ大賞2016を受賞作品の「ゴールデン・カムイ」は気になりながらも食指を伸ばしていなかったのは「埋もれていたアイヌの文化がわかる」とか「ジビエを食らう描写がユニーク」といった書評を先に読んで「アイヌ文化啓蒙します」的なマンガだったらヤダなと思っていたから。

読んでその先入観は完全に覆された。 むしろあまりに狂気じみた展開に唖然としながら引き込まれる。

明治時代、日露戦争が終わったばかりの北海道が舞台。主人公は戦争帰りの「不死身の杉元(スギモト)」。アイヌが隠したとされる巨大な金塊を巡って壮大な物語が始まる。
冒頭から戦争のかなりエグい描写。金塊の場所を描いた地図は、網走監獄の囚人たちの身体に刺青で記されている。その刺青を組み合わせるために、囚人たちを巡って、様々な思惑を持つ人々が戦いを繰り広げる。

日露戦争帰りの最強と謳われた帝国陸軍第七師団、幕末の生き残りたち。函館・五稜郭で戦死したはずの土方歳三が実は生き残っていたという設定で、死に場所を求める土方が名刀・和泉守兼定とライフルをぶん回しながら暴れ回る。 そこに同じく新撰組隊士であった永倉新八(松前藩出身の永倉は、史実においても明治時代に網走監獄で剣道の指南を行なっている)、網走監獄の脱獄王・白鳥由栄をモデルにしたと思しき白石由竹、熊殺しの柔道家・牛島辰熊をモデルとした牛山辰馬。

かなり破天荒な設定が、それなりに説得力を持つのは、日露戦争後の閉塞感、戦争における人間の業、近代日本が死に物狂いで進めた富国強兵のひずみともいえる網走監獄や帰還兵、アイヌ民族への差別といったテーマを描いているからかもしれない。
地図のために死んだ囚人から刺青人皮を剥いだり、明らかにイっちゃっているキャラが続出したり、狂気とヤバさを孕みながら、綺麗な絵と妙にコミカルな展開が相まって、クセになる。
「ワンピース」の健康的な明るさに耐えられない方に強く強くオススメしたい。


 
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