B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

京都にいくと、必ず訪れる店がある。「祇園ろはん」

ろはんのメニューは、定食とアラカルトで構成されている。

定食は、魚(刺身・煮付け・炭焼き・鯖味噌煮)、牛(炭焼き・すき焼き・ふきのとう鍋)、鶏(唐揚げ・すき焼き・炭焼き)、豚(生姜焼き・味噌漬け)があり、それぞれ先付、お造り、ご飯と香の物、お椀がセットになったミニコース仕立てになっている。

アラカルトは日替りで、その日に市場から仕入れたであろう食材が並ぶ。たとえばこの日、訪れた6月3日には、若鮎、鱧、じゅんさい、鮟肝、鱧と野菜の天ぷら、食事ものなどが並ぶ。名物の鯖サンドも。

10名座れば満席のカウンターに腰掛け、目の前の広くはない厨房で、和久傳出身の主がきびきびと料理するのを眺めながら、アラカルトをゆるゆるつまむのもいいし、コースの先付やお造りを楽しみながら一献傾けるのもいい。

この日注文したものは、鱧と鶏唐揚げ定食。お酒はきりん山。

まずは先付が運ばれてくる。じゅんさいと葛餅の冷製。出汁酢に見事なじゅんさい、葛餅のふるふるとした感触。

お造りはよこわ(若いクロマグロ)のたたき。よこわに串を打ち、厨房のガスこんろにパッとひとつかみの藁をくべ、表面を炙る。

表面にほんのりと温かさの残ったよこわのたたきは、ほんのりとしたピンク色で、成長したクロマグロのような血合いや酸味がなく、旨味が口の中に溶け出す。

続いて鱧。隣席のカップルが関西弁で「鱧いうんはゴリゴリか蕩けるか、どっちかやなあ」「ここのは蕩けるなあ」といいながら食べている。湯引きしたばかりの鱧、丁寧に骨切りされたフワフワの白身肉をたっぷりの梅肉につけて食べる。冷酒を一口。京都の夏が始まる。

「お料理、もっといかがですか」と勧められるが、なにぶんひとりで、たくさんは食べられない。そう告げると、やがて定食の唐揚げが運ばれてくる。

鶏肉のギュッとした旨味。醤油味と脂と共に、口の中が唐揚げの旨さでいっぱいになる。土鍋からよそってくれたご飯を一口。香の物、そして味噌汁。よくぞ日本人に生まれけり、だ。

ご飯のおかわりを頼む。これもまた名物の、卵かけご飯にしてもらう。どこから取り寄せているのか、一度聞いたけれど失念してしまった。本当に旨い、味の濃い卵。醤油をかけて、さっとかき混ぜたところを、つやつやのご飯にかけて、あっという間に食べてしまう。

名物の鯖サンドを食べてみたいといつも思うのだが、ここまでで満腹になってしまう。また、いつかきたときに。

店を出る。角を曲がるまで、ずっと主が店の前で見送ってくれる。深々と、頭を下げて。南座が煌々と輝き、そのたもとを鴨川が流れる。山に囲まれた古都。古く、そしていつまでも新しい。
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