B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

歴史を学ぶことは贅沢である。

まず、歴史を学ぶことによって、目の前の現実が何層にも奥行きを増す。

ヨーロッパの建築や絵画を観るときに、キリスト教の歴史を知っていれば幾層にも理解が深まるように。

単位であれ活版技術であれ、その成り立ちの歴史を知ることは、単に表層を視覚や聴覚で捉えるよりも、その魅力や味わいを何倍にも増す。

歴史を学ぶことは、人生を味わい尽くす手段だと思う。しかも、最も安価に効率良く。

ふたつめの理由は、言うまでもなく、現在で応用可能な知恵を学べるからだ。大まかな予測を立てるための膨大な仮説検証の集積も、ほぼタダみたいな値段で書籍やネットの海を漂っている。

みっつめには、とにかくスリリングで魅惑的だからだ。偉大な王の英雄譚、歴史的会戦、策略と陰謀。手に汗を握る物語の気が遠くなるような集積。

ライフネット生命保険の出口治明会長の近著「世界史の 10人」は、まさにそんな歴史を学ぶ悦びを堪能させてくれる本だった。

取り上げられている10人は、以下の通り。

十字軍、モンゴルを破り、イスラム世界の中興の祖となった バイバルス
モンゴル世界帝国第五代皇帝として クビライ
インド・ムガール朝を興した バーブル
中国の歴史上唯一の女帝・ 武則天
統治機構の先端的改革を推進した宰相・ 王安石
「ヨーロッパの祖母」 アリエノール
「王座上の最初の近代人」といわれる フェデリーコ二世(フリードリヒ二世)。
16世紀から今日に至るまで世界に君臨する大英帝国の礎を築いたエリザベス一世
クーデターで夫から政権を奪取し、エルミタージュ美術館の巨大な蒐集品でも知られるエカチェリーナ二世
「作らなかったのはエッフェル塔とラ・デファンスだけ」といわれるほど、パリの美しい街並みを築いた ナポレオン三世

偉大な王の話は、優れた冒険家や起業家の伝記のように、あるいはそれ以上に、スリリング。王朝も企業も、根本は同じで、イノベーションとアドベンチャー、統治と資金調達の連続。その中で繰り広げられる巨大な野望と打算、挑戦、狂気の物語に魅せられてやまない。


出口 治明
文藝春秋
2015-10-31



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