B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

第五の権力---Googleには見えている未来」。司法・立法・行政の三権で統治される国家権力。第四の権力であるメディア。では、第五の権力とは何か。

2025
年、世界人口80億人のほとんどが、オンラインでつながる。
これからの時代は、誰もがオンラインでつながることで、私たち
1人ひとり、80億人全員が新しい権力、つまり「第五の権力」を握るかもしれない。

と前書きで書いた上で、
80億人の仮想空間でのコネクティビティがもたらすかもしれない世界を予測する。著者であるGoogle会長のエリック・シュミット、米国国務長官の政策アドバイザーを務めたジャレッド・コーエンが、フセイン政権崩壊後のイラクでさえ、携帯電話が普及していることに驚く場面から、未来の物語は始まる。 

世界のあらゆる地域・階層の人たちが「コネクティビティ」(ネットワークへの接続性)を手に入れることによって、広大な仮想空間が生まれ、それは現実世界を変容していく。ニューヨークのアパートの一室で、中東の革命を扇動することもできるし、無名の市民のつぶやきが、ビン・ラディンの掃討計画を世界に知らしめることもある。

本では思考実験として、「もしも『スンニ・ウェブ』が立ち上がったら」という仮説を展開する。イスラム教のスンニ派がネットワークでつながり、国境を超えたプラットフォームをつくり、利子の概念のないEコマースやインターネットバンキングをつくったなら。 世界に散らばるディアスポラ、たとえばユダヤ民族やロマ民族が、インターネット上で仮想国家をつくり、電子政府を樹立し、独自のオンライン通貨を流通させることもできる。

それは、もはや現実の国家と何が異なるのか。インターネット上に仮想国家が生まれ、国境が生まれた世界で、現実の国境や通貨、国家という枠組みは、どう変わるのか。本のとりあえずの結論は、以下の通り。


地球上の大多数の人は、「
2つの世界」で同時に暮らし、働き、統治をうけるようになる。
2つの世界はときに互いを抑制し合うことも、衝突することもあるだろう。一方の世界のできごとが、他方の世界のできごとに拍車をかけ、弾みをつけ、油を注ぎ、その結果次第では、「程度の差」でしかなかったものを、「種類の差」にまで変えてしまうだろう。
 

80
億人のコネクティビティは、間違いなく「第五の権力」となるだろう。それは、新たな国家をつくり、国境をつくり、通貨をつくり、言語や文化圏をつくるものだから。

そして、この本では決してそのように書かれないけれども、
80億人のコネクティビティが権力になることは、Googleが新たな国家になり得るということだ。言い方を変えれば、Googleが国家を規定し、紛争の勝敗を左右し、言語圏をつくり、商圏を再構築し、新たな資本主義を創造し得るということだ。80億人のメールや検索履歴、購入履歴、入出金履歴といった、仮想空間における膨大な情報を把握し、コントロールできる存在として。 

紛争しているのは、もはや国家ではなく、
GoogleAmazonAppleFacebook、彼らがプラットフォームとして、世界の新たな覇権を競い合い、既存国家とせめぎ合っているのではないか。インターネットの利便性を享受しながら、私たちは今、とてつもない革命の渦中にいるのかもしれないと思う。

第五の権力---Googleには見えている未来
エリック・シュミット
ダイヤモンド社
2014-02-21


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