B型だもの。

分散化していく世界の片隅で。

金沢の寿司の名店、「小松弥助」に、初めて行った。

寿司好きの友人をして、このためだけに金沢に行くと言わしめる店。ずっと、気になっていた。

雑誌の巻頭で特集される名店でありながら、ロケーションは至って変わっていて、金沢市内のAPAホテルロビー内にある。

水曜木曜が定休で、17時までの営業というので、金曜の13時半に訪れる。予約の客が、ひきも切らない。カウンター11席にテーブルがひとつの小体な店だ。

席に座ると、お任せ一通りで、後で好きなものを足すことを勧められる。そうしてもらって、お酒を頼む。酒は6種類ほど。大将のおすすめという、兵庫の白山という酒を頼む。さらさらとして、美味しい。

烏賊の細切り。

炙りトロ。すだちをしぼって。

ばい貝。子を忍ばせて、すだちをかけて。

水茄子の糠漬けにすだちを絞って。

マグロのヅケ。熟成した赤身がねっとりして、頭が痺れるほど官能的。

甘海老の昆布締め。塩とワサビで。

煮蛤。これまで食べた中で、一二を争う。

焼いた穴子と胡瓜の巻物。

ヅケと雲丹のトロロ丼。

ここまでで、一通り。

その後、お好みで、穴子を塩で。煮蛤をもう一貫。ネギトロ巻。

ネギトロは、びっくりするようなトロと白髪ネギを、豪快に叩いて、巻いてくれる。

4人で、お酒を3本頼んで、51000円。

たぶん、このためだけにまた金沢に行ってしまうだろう。

大将と語らいながら、楽しく食べて、寿司ってなんだろう、生きるってなんだろうと思いを馳せてしまう。

気取らずに、魚と米を最高に愛して、ひたすら美味しい食べ方を、自由に、血の滲む思いで極めたなら、きっとこんなに楽しい寿司になるんだろう、という至高。一期一会ということを、思う。楽しく、語らいながら、命と技術の極みをいただく。その、有難さ。

あと何度、私は、このお寿司を食べられるだろう。あと何度、寿司を食べ、食事ができるのだろう。

その、儚さと強さと愛おしさ。励まされるような切なさで、暖簾をくぐる。
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